6.二酸化炭素電解還元評価装置
近年頻繁に議論されている地球環境問題については、既に50年前(1972年)に「ローマクラブ」が提出した、「成長の限界」レポートの中で暗示されており、そこでは世界人口の増加と資源消費がこのまま続けば、やがて100年以内に経済成長の鈍化、破綻に直面することになる、と警告されました。当時は「環境破壊」と言う視点はまだ少なく、エネルギー、食料をどう確保するか、そのために化石燃料依存から豊富な自然エネルギーへの転換、という啓蒙的な論評が主でした。
今世紀に入って、気候変動と地球温暖化の問題が大きく取り上げられるようになりました。気象庁データによると、「世界の年平均気温は、長期的には100年あたり0.73℃の割合で上昇し、特に1990年代半ば以降、高温となる年が多くなっています」と報告され、この推移は地球温暖化ガス(二酸化炭素、メタン、フロンなど)の大気中増加と関連付けられています。
1997年の京都議定書、2017年のパリ協定は地球温暖化問題解決に向けた締約国間の指標となるものでしたが、そこでは「2050年までにカーボンニュートラル社会」の実現を謳っています。産業革命以来増加している二酸化炭素濃度の抑制と固定化、特に有用物質への転換など技術的課題の解決が迫られています。二酸化炭素の電解還元技術もその1つで(文献1、千葉大学の堀教授によって、先駆的な研究が行われた)、1日も早い実現に向けた技術開発が進められています。
表1 CO2定電流還元の結果、5.0 mAcm-2, 0.1M KHCO3中での生成物電流効率(文献1から構成)
電極 | 電位 | 生成物 | Total | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
vs. SCE | CO | CH4 | C2H4 | アルコール類など | H2 | ||
Cu | -1.41 | 2.0 | 29.4 | 30.1 | 18.6 | 10.9 | 91.0 |
Ag | -1.37 | 81.5 | 0 | 0 | 0.8 | 12.3 | 94.6 |
Au | -1.14 | 87.1 | 0 | 0 | 0.7 | 10.2 | 98.0 |
Zn | -1.54 | 79.4 | 0 | 0 | 6.1 | 9.9 | 95.4 |
Cd | -1.63 | 13.9 | 1.3 | 0 | 78.4 | 9.4 | 103.0 |
Ni | -1.48 | 0 | 1.8 | 0.1 | 1.6 | 88.9 | 92.4 |
Pt | -1.07 | 0 | 0 | 0 | 0.1 | 95.7 | 95.8 |
(文献1) 堀 義夫 繊維と工業 Vo. 48, No. 1, 39-42 (1992)
本装置は、そのような研究開発の一助となるもので、CO2ガスを電気化学的に還元処理し有用物質に変換するためのシステム開発を目的とした、新しいコンセプトの評価試験装置です。
本装置により、CO2ガス電解還元試験に携わる研究・技術者が、様々なガス反応触媒や構成材料を用いて、CO2から有用物資への転化率などを計測し、システムの性能向上、システム運転試験などを行うことによって、カーボンニュートラル社会に向けた研究開発に役立てることができます。
「シンプルでコンパクト、研究者一人1台」をコンセプトに開発された本装置は、「CO2の電解還元反応の生成物は、CH4、C2H4などの有用物質の他はH2、COが殆どである」という研究結果に基づいています(文献1)。
具体的には、以下のような構成でCO2電解還元反応の追跡及び生成物の分析を行い、大がかりなシステム開発に向けた前段階の基礎研究を容易に行うことができます。
(1) CO2電解還元触媒を開発している研究者が基礎研究で得られた材料の性能を実証するため、これを組み込んだ片側MEA(膜・電橋接合体)を作製・性能測定を行い、システム開発に資する。
(2) CO2電解還元反応後のガスを、ガス分析セルに導入し、生成物への転化率を測定し解析する。
(3) 種々のCO2濃度に対応して、電化還元反応、生成物への転化率を測定し、システム性能向上に資する。
(4) 計測はすべて定電流電源装置やポテンショスタットを用いて行い、手軽に試験することができる。
(5) 導入するガスの構成比やCO2濃度その他ガス供給条件をを系統的に変化させてガス反応特性を測定し、最適運転条件を見いだす。
(6) 種々の運転条件において長時間運転し、システムの耐久性など実用的特性を明らかにする。
右:CO2反応セル、及びガス分析セルの構成。
価格表
品 名 | 内 容 | 価格(円) | 備 考 |
---|---|---|---|
二酸化炭素電解還元評価装置 | CO2反応セル、専用ラック | 750,000 | 本体300mm×310mm×高さ420mm、ガス配管付き、CO2反応セル温度コントローラ(室温~80℃)、電位計測エレクトロメータ及び基準電極 |
CO2及びN2混合ガス発生器 | CO2及びN2ガスカートリッジ(各5)、CO2及びN2ガス減圧弁+流量計 | 150,000 (2ガス系統1組) |
CO2ガス及びN2ガス減圧弁 0.5MPa、最大流量500ml min-1、2系統1組 |
定電流電源 | CO2反応セル制御用定電流電源 | 50,000 | 最大3A定電流電源 |
CO2反応セル片側MEA作製キット | GDL 5枚 | 5,000 | ポーラスカーボン板 |
反応セル電解質膜 | アニオン交換膜 | 2,100 | 厚さ約0.05mm |
ガス分析セル | H2/COガス分析セル | 未定 | H2, CO, CO2ガス分析用電気化学セル |