3. 燃料電池電解質膜

 高イオン電導性電解質膜は燃料電池の心臓部にあたる重要部品です。これまではNafion膜に代表される全フッ素系スルフォン酸膜が研究されてきましたが、低コスト材料という観点から非フッ素系膜の開発も盛んです。これら新規開発膜の問題点は全フッ素系膜に比べて化学的安定性(特に耐ラジカル安定性)が劣ることが挙げられます。しかしながら、炭化水素系膜でもポリマーネットワークのミクロな設計技術によって十分イオン電導性、機械特性、化学的耐性の面で満足できる材料を実現できることを示してきました

 つくば燃料電池研究所では、これまで行ってきた非フッ素系高イオン電導性膜技術の経験をもとに、燃料電池触媒層と膜との界面接合を良好にするために必須な新規イオノマー製造に取り組んでいます。現在用いられているのは、やはりフッ素系のイオノマーである"Nafion solution"が主流となっていますが、非フッ素系膜に適合した安価なイオノマーの開発は波及効果が大きいといえます。

 また、いろいろな種類の膜を構成して新しい機能を発揮させることも燃料電池のシステム開発にとって重要な課題です。

 つくば燃料電池研究所は、燃料電池膜内のイオンや水輸送のメカニズム解明を行ってきた経験を生かし**、新しい膜構成法やシステム設計の開発を通して、燃料電池産業のお役にたてることを目指しています。

: J. Qiao and T. Okada: "Hydrocarbon Polymer Electrolytes for Fuel Cell Applications", in "Electroanalytical Chemistry Research Developments", Chap. 2, pp. 85-134 (Ed. by P. N. Jiang), Nova Science Publishers, Inc., New York (2007).

**: T. Okada, M. Saito, and K. Hayamizu: "Ion Exchange and Transport Characteristics of Perfluorinated Polymer Electrolyte Membranes for Fuel Cells" in "Electroanalytical Chemistry Research Developments", Chap. 1, pp. 7-84 (Ed. by P. N. Jiang), Nova Science Publishers, Inc., New York (2007).